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(仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~
(仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~
Auteur: 花室 芽苳

prologue

Auteur: 花室 芽苳
last update Date de publication: 2025-08-01 00:33:02

「ええと、お約束はされてますでしょうか? でなければ、ちょっと……」

 有名企業の自動ドアをくぐって直ぐ、受付担当の若い女性が困ったような表情で私をその場に引き止めてきた。

 当然と言えば当然の足止めを食らって、どうしようかと迷っている時。偶然にターゲットが数人の部下と共に歩いてこちらに向かってくるのが見えた。

 すぐ隣の美人は秘書……だろうか?

 上司と部下にしては、随分距離も近いように見える。彼に聞いた通り、きっと軽薄で無責任な男に違いない。

「ああ、もう大丈夫です。今日の私は運が良いみたいなので」

「え? あの、お客様!?」

 新人であろう受付の女性からの返事も聞かず、私は目的とする人物へと迷いなく向かって行く。

  ……この時の自分がちょっとラッキーどころか、完全に幸運の女神に見放されているとも知らずに。

 ターゲットの目前に憮然と立ちはだかり、これ以上ないくらいの笑顔を相手に向けた。

「あなたが神楽《かぐら》朝陽《あさひ》さん、ですよね? はじめまして、そして……!」

「は? え、おいっ!? ……っぐ!」

 すぐに標的を殴れるようにと準備しておいた拳を、その男めがけて遠慮なく繰り出した。突然現れた女に殴られることなど予想しなかったであろう、その男性は私の拳を顔面で受け止める羽目になったのだが。

 それでも私の怒りはとてもじゃないが納まらない。この男の所為で自分の人生が大きく狂わされたのだと思うと、後二~三発ほど殴らせてもらいたいくらいで。

「お、お前はなんてことをしてるんだっ! この男性が誰なのかを知らないのか!?」

「いいえ、ちゃんと知ってますよ。神楽 朝陽、この神楽グループの御曹司様でしょう? 最初に名前を確認したじゃない」

 コイツの取り巻きか何からしい男が私に真っ青な顔してわあわあ言ってくるけれど、そんなこと知った事じゃない。私がここまでするのにはちゃんと理由がある、これは立派な復讐なんだから。

「……へえ、じゃあ貴女は俺を神楽 朝陽だと知ったうえでこの暴挙に出たと? 随分勇気ある女性ですね、面白い」

「そう? 私は全然面白くないけれど。こういうのがお好きなら、もっと殴って差し上げましょうか?」

 そうは言ったものの、すでに私は数人の男性から身体を拘束されているので実現するのは難しいだろう。

 一回だけなのに殴った拳はジンジンと痛いし、ギリギリと複数人に抑えつけられていて窮屈だ。

 ……これも全部、元はと言えばこの男のいい加減で軽薄な行動の所為だというのに。薄っすらと意地の悪い笑みを浮かべる神楽 朝陽を、私は負けじとギリギリと睨み返しすしか出来ないが。

 ――それでも私が、こんなとんでもない行動に出たのにはちゃんと訳があって。

 けれど感情的になって喧嘩を売った相手が、この神楽朝陽でなかったら……そう何度も彼に悩まされ、この胸を痛めなければならない未来が待ってるなんて。

 この時の私は、本当にこれっぽっちも想像していなかった。

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  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   愛され花嫁は誓う 3

     ****** 白いタキシード姿の新郎が待つ祭壇へと続くバージンロードを、純白のドレスを着た新婦が父親のエスコートを受けてゆっくりと進んでいく。 厳かな雰囲気の中でも美しいその鈴凪《すずな》の花嫁姿に、誰もが見惚れそして感嘆の声を上げた。「雨宮《あまみや》さんの花嫁姿、凄く綺麗だわ。新郎もかなりのイケメンだし、二人共とてもお似合いよね~」 「もう……轟《とどろき》さんってば、まるで娘を嫁に出したみたいに感動しちゃって。でも分からなくはないです、本当に素敵な結婚式なんだもの」 鈴凪が務める会社の先輩である轟は意外にも涙脆いらしく、ハンカチを持った手でその目元を押さえているようだ。そんな彼女に苦笑いを浮かべつつも、同僚の女性スタッフも式の素晴らしさに感動している。  その向かい側には鈴凪の母と兄が並んで座っており、母は娘の美しい花嫁姿に嬉し涙を浮かべかけていた。それでも彼女の兄である響《ひびき》は朝陽を睨んでブツブツと何かを呟いているが、それもたった一人の妹が可愛いからなのだろう。「悔しいけれど……今日の鈴凪は、今までで一番綺麗で幸せそうに見えるな」 「そうね、あの子の花嫁姿が見れて私も本当に嬉しいわ」 「はあ、アイツめ……鈴凪を誰よりも幸せにしないと、絶対に許さないからな」 そうしてその奥の席には離婚の危機を何とか回避したらしい、朝陽《あさひ》の父である幹臣《みきおみ》と妻の月子《つきこ》も二人で並んで座っている。彼らの息子が浮かべる柔らかな笑みを見たことで、やっと心から二人の結婚を喜ぶことが出来たようだった。「本当に朝陽のあんな幸せそうな笑顔を見るのは久しぶりですね」 「……ああ、そうだな」 今まで目を背けてしまっていた家族の関係をもう一度しっかりと築く、そう約束した幹臣の言葉を信じる事に決めた月子。彼女は長年連れ添ったその夫に、静かに寄り添うように座っていた。  そして少し離れた席に並んで座っているのは、スーツ姿の白澤《しらさわ》と淡いブルーのドレス姿を着た紫苑《しおん》で。美しい花嫁となった鈴凪を見て、紫苑はやや興奮気味に白澤へと話しかけている。「……なあ、白澤。この美しい鈴凪の花嫁姿を見て、どうにか記念に残してみたいとは思ったりはしないか?」 「そうですね、一生の思い出として残るようにプレゼントしても良いかもしれません」 紫

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    「それと、ここからは梨乃佳《りのか》についての話になるんだが……」 当初は全ての容疑を否認していた鵜野宮《うのみや》さんだったが、少しずつ自分のしたことを認めて時折反省の言葉も口にしているそうで。 一番意外だと思ったのは、彼女が本当に計画していた内容についても素直に話すようになった事だった。 事件の日に鵜野宮さんが朝陽《あさひ》さんをあの場所に案内したのは、私が流《ながれ》とヨリを戻して親密な関係になった様子を朝陽さんに見せつけるためだったらしい。 強引にでも流が私との既成事実さえ作ってしまえばどうとでもなる、そう考えての事だったと。想像すると恐ろしい話だが、それも失敗に終わったからあんなに焦ってたのかもしれない。「やっと一歩前進したって感じですね、まだこれからの事も多いとは思いますけど」「彼女がそこまで認めたのは大きな進歩だと思いますよ、正直あんな性格ですからずっと否認し続けてもおかしくはなかったですし」 白澤《しらさわ》さんは当初から鵜野宮さんに対してやや冷たい感じがするが、彼女の態度を考えればそれも仕方ない。好き嫌いは見せないタイプかと思っていたが、意外とハッキリしてるのが逆に面白くもある。「……確かに、そうだったかもな。でも最後の鈴凪《すずな》との直接的な関りが、梨乃佳の心の何かを変化させたのかもしれないとは思ってる」 そう言われても私は鵜野宮さんに何かをしたわけではない、彼女に対し言いたい事をハッキリと言葉にしただけ。それもあの時の鵜野宮さんには、あまり響いてるとは感じなかったのだけど。 それでも私の言葉は彼女の心境を変化させるような、何かしらの効果があったのだろうか?「え? ……私が、ですか?」「本人は無自覚でしょう、それも鈴凪さんの良いところではありますが」「ははは、それはそうだな~」 無自覚って、何だか私だけ除け者にして二人だけで通じ合ってないですか? こういう時だけ妙に気の合う様子を見せる朝陽さんと白澤さんに、少しだけ嫉妬してしまう。「……え? これってもしかして、私は今お二人に揶揄われてたりするんでしょうか?」「さあ、それはどうだろう」「さあ、それはどうでしょうね」 この男共は、こんな時に限って二人で揃ってドSな本性を見せてくる。ああ、本当にタチが悪い! 楽しそうな二人に、ムキになった私の不満をぶつけても笑われ

  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   その結末は当然で 6

     それから数日も過ぎてしまえば、何事も無かったかのように落ち着いたいつもの生活に戻ったのだけれど。あの出来事が私の記憶から消える訳でもないし、夜中に何度か夢で見る事もあった。 朝陽《あさひ》さんはそんな私を心配してか、マンションにいる間はずっと傍にいてくれて。私はそれで十分だったけれど、彼はまだ気になっているようで私に訊ねてくるのだ。「本当にあの事件の事を公に公表しなくても良かったのか? アイツらが警察に捕まったとはいえ、今もまだ鈴凪《すずな》が攫われたことは隠されたままなんだぞ」「それはいいんです。私はこうして元気ですし、これ以上大事になれば朝陽さん達に迷惑がかかる可能性だってあるんですから。本当にそんな事は望んでないんですよ」 私としてはあの事件に関して、必要以上に表沙汰にするつもりはない。朝陽さんはそれが不満だったようだけれど、色々な事を考えた上でちゃんと決めた事だから。 私がそう答えると、渋々といった感じではあるが最終的にはこちらの意見尊重してくれるのだ。「鈴凪がそういうのなら、俺はこれ以上は口出ししないが……」「ふふふ。ありがとう、朝陽さん」 こんな私達の会話を聞きながら黙ってティーカップを傾けている白澤《しらさわ》さんは、いつも通りマイペースなようで。それでも彼やシオさんには凄く助けてもらって、今でも感謝の気持ちしかない。「そういえば、白澤さん達の事情徴収は全て終わったそうですね? 本当にお二人にも迷惑をかけてしまって」「鈴凪さんは被害者なのですから、私達に謝る必要なんてありませんよ。それに紫苑《しおん》も貴女のためならと、全く苦ではなかったようですし」 あの事件があった後、心配するシオさんからは何度もスマホにメッセージをもらった。励ましや労わりの言葉、そして前向きになれるような面白い画像まで。本当に嬉しくて、荒んだ心も全部満たされるようだった。「……それなら良かったです、シオさんにもまた会いに行きたいな。以前交わした、お茶の約束もまだですし」「そうですね、鈴凪さんと会えれば紫苑もきっと喜ぶでしょう」 そういえば私が攫われる前に、シオさんが白澤さんと二人きりで話した内容はいったい何だったのだろう? ふと思い出しそのまま黙ってしまうと、その様子を見ていた白澤さんが不思議そうな顔をしてしまって。「……鈴凪さん、どうしましたか?

  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   提案は思い付きで 1

    「ほら、しっかり歩け。ついさっき、俺を襲撃してきた勢いはどうした?」 「そんなものはとっくに、どこか遠くへ飛んでいきました……」 強引に連れてこられた場所は、神楽《かぐら》グループのビルの最上階だった。一般人が入れないようなしっかりとしたセキュリティ、それを解除して彼はどんどん奥へと進んでいく。 【社長室】と書かれた部屋の隣、彼はそこのドアを開けると私に中に入るように言った。「あの、私はどうしてここに連れてこられたんでしょうか」 「さっきまでと別人のようだな。そんなにショックだったか? あの程度の男に裏切られたことが」 ハッキリとそう言われて、傷口を抉られてるような気分になる。神

  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   裏切りは計画的に 3

     美人で品のある女性の隣を歩いているのは、元婚約者の守里《もりさと》 流《ながれ》だった。 彼は私がここにいる事にも気付きもせず、横にいるキャリアウーマンと言った感じの美女に話しかけていた。 「もう別れた」「俺の本気」とは? クビになるから、私と結婚出来ない。だから別れて欲しいって、流は私にそう言ったよね?  頭の中が混乱する、流の言葉と今の彼の言動は全く一致してなくて。「……へえ、あれが守里 流か。どこがいいんだ? あんな軽薄そうな男の」「…………」 神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》の嫌味な問いかけに応えるような余裕も今はない、ただ目の前の現実を理解するので精一杯で。「しかし、

  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   裏切りは計画的に 2

    「……へえ、そうなのか?」 取り巻きの男性の言葉にさして興味がないというように返事をした神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》だったが、私はほんの一瞬だけ彼が眉を寄せたのを見逃さなかった。 でも、あの方いうのは……? いいえ! 今は、そんなことはどうだっていい。この場でハッキリさせなければならないのは、元カレの流のことに変わりない。 そもそも今の話が本当なのならば、私の婚約破棄は何のためだったというのか?「でも! 流《ながれ》は貴方の女性関係が理由でクビになるから、私とは結婚できないって……!」「冷静になって、よく考えてみろ。社員の解雇理由に、俺の個人的な女性関係が関わっているわけないだ

  • (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~   裏切りは計画的に 1

    「朝陽《あさひ》さん、この女性はどうしましょう? このまま警察に突き出してやりますか?」 耳元で大きな声を出すのは止めて欲しい。きっと神楽《かぐら》 朝陽にも、充分聞こえてるでしょうし? だけどそんな私の考えを見透かしたように、眼鏡のレンズ越しの瞳がスッと細められたことに気付いた。 多分……というか、間違いなくこの男は性格が悪いのだろう。普段はあまり役に立ってくれない直感が、私にそう伝えてくる。「そうだな、せっかくだから俺にこんな挨拶をしてくれた理由を聞いておくのも有りかな。恨みをかう事は珍しくないが、この俺に直接的な攻撃をしてくる女性は稀だし?」「ですが、朝陽様……」 有無を言わ

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